「嘘だ」

「嘘じゃないってば」

「いや、絶対嘘だね」

「嘘じゃないって言ってるでしょ!しつこい」

「じゃあほんとなんだね?」

「最初からずっとそう言ってる」

「わかった。じゃあ、“ダウト”」

「は!?ちょっ――」


テーブルの上に裏返しで置かれたトランプをぺらっと捲って、田辺がふふんと得意げに笑う。


「ほらね、やっぱり。声に力が入り過ぎっていうか、否定するのに必死過ぎ」

「質問攻めにするのはルール違反でしょ!」

「そうなの?ごめんね、俺そんなルール知らなくて。そういうのは、最初に言っといてくれないと」


悔しげに歯噛みする真帆の手からトランプを抜き取り、自分の手札とテーブルに置かれたものとを混ぜ合わせる田辺。その口元が可笑しそうに緩んでいるのが、真帆の悔しさを倍増させる。

“ゲームをしよう。勝ったら知りたいことを教えてあげる”

そういう約束で始めたトランプゲームは、王道のババ抜きから始まり、神経衰弱、七並べ、スピード、大富豪と来て、先ほどまでおこなっていたのはダウト。
二人でトランプなんてしても面白くないだろうけれど、勝てさえすればなんでもいいのだと始めたものの、未だ何一つ真帆は田辺に勝てていなくて、それに加え久しぶりのトランプは悔しいことに盛り上がっている。