「その触り方やめろ!変態」

「変態とは失礼な。ていうか田中さん、耳もほっぺも真っ赤だけど、もしかして慣れていらっしゃらない?」


わざとらしい笑みを浮かべて、田辺が絡めた指で手の甲や指の腹をなぞる。


「っ……ほんと、もう……このっ!」


睨み付けても笑顔を返されて、またぎゅっと手を握られる。


「いやあ、俺は今過去に戻ってやり直したいくらいには後悔してる。どうしてもっと早く、高校生の頃から田中さんと仲良くしておかなかったんだろうって。まさか田中さんが、こんなに楽しい人だったとは思わなかった」

「……私はさっきからずっと同窓会に参加したことを後悔してる。あと、田辺くんがこんなに性格の歪んだ人だとは思わなかった」

「まったく田中さんは失礼にもほどがあるし、俺のことを全然わかってない。これはもうあれだね、ハグだね」

「はあ!?なんでそうなる!!」


手を繋いだまま立ち上がった田辺が、テーブルを回って近付いてくる。
咄嗟に真帆も立ち上がると、反対側へと逃げた。
けれど引っ張ってもびくともしない手が未だ繋がったままのため、逃げるにも限度がある。