「結局田中さんは、昨日の夜何があったのかどうしても自力で思い出せないんだとしたら、俺の言うことを信じるしかないんじゃない?だって昨日の夜、田中さんと俺は二人きりだったんだから」


真面目な顔をしてそこまで言って、今度はころっと笑顔になって、田辺は放心する真帆の手を握る。


「とまあそういうわけだから、田中さんはもう少し俺と仲良くしようとしてくれてもいいと思うんだよね。だって、俺のことを知らなきゃ、俺が本当のことを言っているかどうかもわからないでしょ?」


それは、確かにその通りだ。


「それとも田中さんは、俺が“これは本当のことだよ”って言ったら無条件でそれを信じてくれる?」


それには、間髪入れずに首を横に振る。それを見て田辺は、なぜだか可笑しそうに笑った。


「まあ、つまりはそういうことなんだよ田中さん」


理屈はそこそこわかったが


「……手を握る必要性がどこにある」

「仲良しの人とは手を繋ぐでしょ?」


言いながら、田辺はぎゅっと握る力を強める。