「意識のない田中さんはタクシー呼んでも自分の家の住所言えないし、かといって路上に放置するわけにもいかない。となるともう、選択肢は限られるでしょ?」


そこで田辺がホテルという選択肢を取らなかったことに安堵したいところだが、現在真帆はホテルで目覚めるのと同じくらいの衝撃を受けている。
そして、“したかしないかで言ったら、間違いなくした”というのが、一体何をしでかしたのかが問題だ。


「色々とその……ご迷惑をおかけしてしまったようで。……でもあの、その“した”っていうのはあれだよね、私が何か失礼なことをしてしまった的な、そういうやつだよね……?」


そうであってくれ!という希望を込めた真帆の問いかけに、田辺は笑顔で首を傾げる。


「さて、どうでしょう」

「どうでしょうって……」


田辺の笑顔が怖いので、真帆は改めて自分の体のどこかに違和感はないかと探ってみる。
探るとは言っても、触ったり服を捲って見てみるのは露骨過ぎるかと、神経を研ぎ澄ます方向で確かめる。

頭が痛くて体が重怠く、口に残るアルコールが気持ち悪いということはよくわかったが、それ以外は特に真帆の研ぎ澄ました神経にヒットするものはない。