彼がお休みで不在だった日の仕事終わり、真帆は険しい顔をした上司に、店舗奥の事務室へと呼び出された。
面接の時と、入社して間もなくの頃に諸手続きで何度か入ったことのある事務室に久しぶりに足を踏み入れると、真帆は早速普段は来客対応用に使っているソファへと促される。
おずおずとソファに腰を下ろした真帆の向かいに、上司は険しい顔のままで腰を下ろすと、その表情で発するにふさわしい険しく固い声で、信じられないことを口にした。

――なぜ、彼に手を出したのかと。

つまるところ、真帆は彼にとって本命の彼女などではなく、二番手の遊び相手だったのだ。二股だったのだ。
それだけでも衝撃だったのに、上司が言うところによると、相手がいると知りながら手を出したのは真帆の方ということになっているらしい。

何がどうしてそうなって、誰がそんなことを言ったのか、教えてはもらえなかったけれど、それは違うと必死に訴える真帆を見る上司の目は、最後まで険しいままだった。
翌日出勤してきた彼もまた事務室へと呼ばれていくのを見て、真帆は祈るような気持ちでいた。