「あの、田辺くん……ところで、本当に田辺くんでいいんだよね?高校の時のクラスメイトの田辺 誠也くんで」

「間違いなく、俺は高校の時のクラスメイトの田辺 誠也だよ、田中 真帆さん。それに、ここに来て別人だったら大変なことだよ」


それはそうだ。だからこそ、確認は大事だ。


「じゃあ改めて、昨日のことなんだけど……」


なぜか田辺の格好はパンツ一枚で、真帆の方は自分のものではない服を着ていて、そして二人は同じベッドで寝ていた。


「あの、なんていうか、その……」


田辺の言い放った“結婚式”という言葉が、真帆の頭の中をぐるぐる回る。


「……私、何かした?」


というより、昨日一体何があったのか。何がどうしてこうなっているのか。

んー、そうだね。なんて焦らすように言いながら、田辺は振り返ってサイドテーブルからリモコンを取ると、真帆の向こう側に向かってスイッチを押す。
ピッと機械が反応する音は、エアコンの方から聞こえた。


「したかしてないかで言ったら、間違いなくしたね。あと一応、ここは俺の家」

「……田辺くんの家」


まあ、自分の部屋ではないホテルでもないといったら、そうなのかなと薄々感じてはいたけれど。