「えっと……じゃああの、かんぱーい」


何にということではない。とにかく“乾杯”なのである。
真帆の突然の乾杯宣言に、島田と田辺がきょとんとしている間に、岡嶋がグラスを突き出して「乾杯！」と力強くそれに乗っかる。
なんとなく流れが出来上がってしまったので、残りの二人もきょとんとしたままにグラスを掲げて、それぞれ「乾杯」と口にした。


「島田はそれ一杯で終わりだからな」

「ええー、なんでよケチ。こんなにお酒に合いそうな物が揃ってるのにー！」

「酔って収集つかなくなったら“俺が”困るからに決まってるだろうが」


なんやかんやと仲良さげに言い合う二人を横目に、真帆はちびちびとグラスを傾ける。
最初に飲んだ甘酒はアルコールが入っていないものだったけれど、そのあとにホットワインを一杯飲んでいるので、ここから先は気を付けて飲まなければならない。
せっかく大きな問題が解決したばかりだというのに、まあ未だ小さな問題は残っているけれど、また酔って記憶がなくなるなんてことは絶対に避けたい。


「田中さんは随分とスローペースだね。もしかして遠慮してる？」

「遠慮と言うか……」

「介抱する心の準備は出来てるから大丈夫だよ」


田辺の方の準備が出来ていたところで、何も大丈夫ではない。