「大丈夫そうだねー。じゃあ、ごゆっくりー」


自分の店でもないのに勝手にサービスして大丈夫なのかという心配と、ここまで必死に隠して来たお店の情報をこんなに簡単に提示するなんて……というちょっぴり恨む気持ちと、せっかくの美味しそうな料理が冷めてしまっている気がする罪悪感とを抱えて、真帆は他の三人の様子を窺う。
岡嶋も同じように様子を窺っていたが、田辺と島田は早々とグラスを手にして、窺い合う二人を不思議そうに眺めている。


「雅功くん何してるの?乾杯だよ」

「田中さん、ほらグラス持って」


促される形でグラスを手にした真帆と岡嶋だが、果たしてこのテーブルは乾杯をするような空気の中にあっただろうかという僅かな疑問を抱えている。
まあそんな疑問を抱えた者がいたところで、自由人が二人もいれば流れは完全に持っていかれるのだけれど。


「えっとじゃあ……岡嶋さんと島田さんのご婚約にかんぱーい」

「かんぱーい!」

「おいこら!!」


嬉しそうな島田の声に被せるようにして、岡嶋が抗議の声を上げる。