「ありがとうねー。あとで美味しくいただくよ。それじゃあ――あっと、大事な用事を忘れるところだった」


立ち去りかけたマスターが、思い出したように戻ってくる。


「お知り合いが来てるよ、田中ちゃん」

「……私?」


疑問符を浮かべる真帆に、マスターが笑顔で頷く。


「ほら、この間お店に来てくれた人。田中ちゃんのポテトサラダを褒めてくれた、あの味のわかるお客さん」


ポテトサラダ?と田辺の声が聞こえたが、真帆はそれには答えずにマスターのあとにくっついてテントの中へ。
店の前には誰もいなかったので自然と視線をイートインスペースの方に流すと、七、八割方埋まったテーブルの中に、見たことのある顔を見つけた。


「あれ、岡嶋さん?」


真帆が何か言うよりも、真帆の背後から田辺が声を上げる方が早かった。


「え、田中さん、岡嶋さんにポテトサラダ作ってあげたの?それってどういうこと?」

「作ってあげたって言うか……」

「俺だって作ってもらったことないのに!?」

「あっ、キミも食べたいー?じゃあ今度うちの店においでよー。サービスするよー」