「好きだって“気付く”んだよ」


なっ!と咄嗟に発した声に言葉がついて来なくて、結局また鯉になった真帆を見て、田辺が可笑しそうに笑う。
そこに、マスターがひょっこりと顔を出した。なぜかその顔にも笑みが浮かんでいる。


「何だか楽しそうだねー」

「楽しいですよ、田中さんといると」

「ちょっと!」


それは良かったーと返すマスターが、大量のお菓子に目を留めて「おおー」と歓声を上げる。


「凄いねー、お菓子パーティーだ」

「よかったらお一つどうですか?ここを貸してもらったお礼に。キッチンの方にも」

「いいのー?そんなこと言われると遠慮しないよー」


うきうきしながら近付いてきたマスターは、しばしじっとお菓子を眺めて吟味したところで、マドレーヌとパウンドケーキを手に取った。


「この二つにしようかなー。僕がこっちで、彼がこっち」


マスターは丸っこい貝の形をしたマドレーヌ、キッチンにいる友人にはドライフルーツたっぷりのパウンドケーキ。