「俺ね、田中さんのことが好き」


すっと伸びてきた田辺の手が、真帆の手に重なった。


「最初は、ちょっとからかうだけのつもりだったんだ。飲み過ぎた田中さんに思いっきりゲロかけられた腹いせにね。でも反応があまりにも良かったから、すぐにばらすのが惜しくなっちゃって。そうしてるうちに、もっと色んな表情が見たいなって、もっと田中さんのことを知りたいなって思うようになった。これって、もう恋だと思わない?」


照れたように笑って、田辺が言う。
いつもはわざとらしい笑みを浮かべてふざけたこという男だけれど、だからこそ真帆もふざけるな!と言い返せるのだけれど、こんな風に照れながら言われると、勢いで言い返せないから困ってしまう。
こんなの、まるで本気で言っているみたいではないか。


「……待って、今前半にさらっと、全部嘘だったって言ったよね?」

「そんなにはっきりとしたことは言っていないけど、この流れでそこに話を持って行っちゃうの?」


そうでもしないと、心臓がバクバクし過ぎておかしくなりそうなのだとは、間違っても言えない。
それに、田辺が白状した事実は、真帆がずっと求めていたものでもある。