さほど親しくもないのに、親しげな顔をされるのは好きではない。
特に田辺とは、現在とても微妙な関係性にあると思っているので、はっきり出来るところははっきりさせておきたい。


「まあいいけどね、過去のことは。俺達は今親しくしていて、これからもっと親しくなっていくわけだし」


田辺の何気ないその言葉に、真帆が睨むような視線を向ける。


「誰が決めたのそんなこと」

「強いて言うなら、あの日の夜、ベッドの上で俺たち二人で」

「適当なこと言うな」

「覚えてないのに言い切っちゃうの?」


それを言われると返す言葉がない。うぐっと言葉に詰まった真帆に、田辺はふふっと楽しげに笑う。


「それで話を戻すけど、あの人はどういう知り合い?」

「……田辺くんに説明する必要ある?」

「そりゃあるでしょ」

「いやないでしょ」


貰った地図を見るので忙しいふりをしながら、真帆は早足でスタスタと進む。
ゆっくり話をするような雰囲気でないことを察して黙ってはくれないだろうかと思ったが、もちろんそんなことで黙る田辺ではない。