真帆が取ったのはバジルの方で、田辺はトマト。
バジルの爽やかさの中にチーズのコクが感じられ、時折カリッとするのはおそらくナッツで、食感もだが香ばしさがまたいいアクセントとなっている。

その美味しさに、続けてもう一口いこうとしたところで、真帆は視線を感じて顔を上げた。
向かいの席で、田辺が何かを期待するようにこちらを見つめている。


「……なに」

「もちろん、感想待ち」


なにが“もちろん”なのか。真帆は無視して視線を逸らすも、じっと見つめられていると食べづらいことこの上ないので、ややあって諦めたように再び田辺の方を向いた。


「美味しい、すっごく美味しい、以上。これでいい?」

「ええー、もっと味の感想をさー。例えば、何がどんな風に美味しいのかとか」

「あのね、テレビで見るような食リポを求められたって困るの。そんなに言うなら田辺くんがやってみればいいし、そもそも食べればいいでしょ。それが一番早い」

「感想を言い合って、美味しいを共有することに意味があるんでしょーよ。まったく田中さんは」


やれやれ何もわかっていない、とでも言いたげな顔にイラっとする。