「田中ちゃんはお店でも全然飲まないもんねー」

「お店……?」

「あーっと!いくらでしたっけ」


突然大声を上げた真帆に、奥で調理中だったマスターの友人だという男性が驚いたように顔を上げる。


「あっ、ここは俺が払うからいいよ。それよりお店って――」

「商品はどこから受け取りますか!ここですか?」


“ください!”と言わんばかりに両腕を突き出した真帆に、驚いたマスターの肩がびくっと跳ねる。


「えっと……、じゃあとりあえずこれだねー。焼き鳥とカプレーゼ。残りは出来たら席まで持っていくよ。もしくは、忙しかったら呼ぶから取りに来てー」


差し出されたのは、焼き鳥が四本乗った皿と、カプレーゼが円を描くように盛り付けられた皿。


「キミにはこっち。特製のホットワインだよー。このシナモンをマドラー代わりにかき混ぜて飲んでね」


田辺が受け取ったのは、カフェのテイクアウトでよく見る形状で蓋がない厚手での紙コップ。そこに、一見すると木の棒のようなシナモンスティックが入っている。