「焼き鳥ならうちでも売ってるよー。彼ね、元イタリア料理店のシェフだから、変わり種のイタリアンな焼き鳥が食べられるよ」

「あっ、それでトマトのいい匂いしてるんですか?」

「イタリアンにトマトは必須だからねー。トマトグラタンなんてのもあるよ。トマト丸ごと一個使ってるの」


このままでは今まで必死に隠して来た自分の職場が田辺にバレてしまうので、その前にどうにかしてこのテントを出たかったのだが、どうやら無理そうである。


「田中さん、何食べたい?俺ねー、店員さんお勧めのトマトグラタンと、あと焼き鳥と、それからカプレーゼと」

「……まさかとは思うけど、目に付いた物全部言ってるわけじゃないよね」

「こんな時に羽目を外さないでいつ外すの!」


どうやら、その“まさか”であるらしい。
田辺はその他にもいくつか料理を注文すると、最後にホットワインを二つ頼んだ。


「……私、飲むって言ったっけ?」

「まだ言ってないけど、これだけおつまみあったらきっと飲みたくなるよ!」


だから大丈夫、と言わんばかりの笑顔を浮かべる田辺に、真帆は思わずため息。