「田中さんって、クレープはお食事系とデザート系とどっちが好き?」

「どちらかと言えばデザートかな」

「イチゴとバナナだったら?」

「イチゴ」

「じゃあとりあえずそれを一つ!」

「え?」


真帆の疑問符などスルーして、田辺は驚きの速さでクレープを一つ購入する。


「はい、田中さんちょっと持ってて。次はあそこのドーナツ行くから」

「ドーナツ?」


おからを使ったヘルシードーナツが売りのお店で、田辺はプレーンと一番人気だというチョコレートナッツを一つずつ購入する。


「田中さん、甘酒無料配布中だって!」


そう言うが早いが、真帆が反応を示すより先に、田辺は紙コップに入った甘酒を二つ貰ってくる。先ほどから、行動が早過ぎて真帆は全くついていけていない。


「はい、どうぞ。クレープは俺が持つよ」

「どうも……」


田辺の勢いに押される形で、真帆はクレープを渡して甘酒の紙コップを受け取る。


「米麴を使っているから、優しい甘さが特徴なんだって」

「ふーん……」


確かに、甘いけれど口に残るようなくどさのない、大変飲みやすい甘酒である。


「ねえ、次はあそこ見ようよ」


田辺が指差す先に視線を送れば、“手作りアクセサリーショップ”の文字が見える。