ちょっぴり残念そうに広げた地図を畳んだ田辺は、それを真帆に返しながら尋ねる。
地図を受け取った真帆は、それをしばし見つめて考えたのち


「……せっかくだし、ちょっと見ていく?」


その提案に、「いいの?」と田辺。


「どこか他に行く予定のところがあったんじゃないの?」


まあ、行こうと思っていた場所はあったが、それは田辺と話をするために予定していた場所であって、絶対にそこに行かなければいけないというわけではないし、行くにしたって別に急ぐ理由はない。
普段の真帆なら、一向も早く用事を終わらせて解散したいと望むところなのだが、今回はお祭りのわくわく感のためか、そんな考えも浮かばない。
けれどそのわくわく感を悟られないため、「まあ、ちょっとくらいなら……」なんて答えてみせると、田辺が嬉しそうに笑った。


「じゃあ行こう!せっかくだしね。どこから見る?あ、待って、俺軽くなんか食べたい。お、たこ焼き!ああーでも唐揚げもいいな。あっ、田中さん!クレープあるよ。もち粉入りのもっちもちクレープだって」

「ちょっと田辺くんはしゃぎすぎ!一気に色々言わないで」


爆速でテンションが上がった田辺を前に、真帆は小さく息を吐く。これは、ついて行くのが中々大変そうである。