駅近辺に用事がある時は、特に夏場は水の流れる音や噴水が涼しげなのでよく通り道として使用していたが、思えば冬にこの公園に来たことはなかったかもしれない。
あってもきっと、タイミングが合っていなかったのだろう。こんなお祭りが開催されていることを、真帆は初めて知った。

なんとなくお祭りといえば夏に催されるイメージなのだが、ここでは冬に開催しているらしい。
加工食品や手作りお菓子、キッチンカーもちらほらあって、食べ物ばかりでなくアクセサリーや雑貨の店もあった。

ついさっきまでミスを連発するほどの緊張に支配されていたのに、ここに来てわくわく感がそれを吹き飛ばす。
お客を呼び込む出店者の声、食べ歩きを楽しむお客さんの声、その楽しい雰囲気に引き寄せられるように、真帆は祭りの中へと足を踏み出した。

まず真帆は、“受付兼案内所”と書かれたテントの前で声をかけられる。笑顔の素敵なお姉さんから渡されたのは、会場内の簡単な地図と、出店している全店舗の一覧、そしてステージイベントのタイムスケジュールが記載された紙。