自分が乗るはずだったバスに追い越されたことで気が付いたが、走って追いかけるわけにもいかず、ため息と共に諦めた。
歩くとなると少し距離があるのだが、まあ歩けない距離ではない。時間もたっぷりあることだし、この無駄に緊張している気持ちを静めるためにも、歩くというのは逆に丁度よかったかもしれない。

なけなしのポジティブを総動員してそう自分に言い聞かせると、真帆は待ち合わせ場所までの道をせっせと歩いた。
これで足元に雪が積もっていたなら泣きたくなるところだが、今年は暖冬と連日ニュースで報道されている通り、道路にはちっとも雪がなくて、昼間なんて春みたいに暖かい日もあるくらいだから歩きやすい。

まあ今日は、風が吹けば冬を感じられるくらいには寒いのだけれど。
歩くと距離はあるのだが、道すがら考え事をしたり、緊張している自分を静めたり、カバンをあさって何度目かわからない忘れ物チェックなどしているうちに、体感では割とあっという間に目的地についてしまった。
そしてそこに広がる光景に、真帆は驚いて足を止める。