「昔から、女性にばかりよくモテるというのが悩みなんだそうだ。それで、一緒にいても目がハートにならない島田とは一緒にいて落ち着くとかで、よく一緒にいるらしい」


島田曰く、「確かに彼女はその辺の男よりずっとかっこいいし、彼氏になってほしいという世の女性陣の気持ちもわからなくはないけど、あたしは雅功くん以外の人は眼中にないから」とのことで、それを聞いた岡嶋が耳まで赤くなったことは言うまでもない。


「まあそれはそれとして、そもそも残業するはめになったのは――」

「わかってます。俺が明日使う資料の数値を間違えたまま作成したせいですよね」


誠に申し訳なく……と深々と頭を下げる田辺に、岡嶋はため息だけ零して何も言わずにコーヒーを飲む。


「でもあれですね、“愛が深まった”ってのは事実だから否定しないんですね。いつもなら全力で否定しそうなところなのに」


田辺からの指摘に、岡嶋は危うく口に含んだコーヒーを吹き出しそうになった。


「お前……!」

「事実を否定するのは嘘になるんですから、いいんですよ岡嶋さ――いたっ!」


脳天に拳を叩きこんだら、流石に田辺は手を離して頭を押さえて呻いた。