「それで、一件落着。二人は末永く幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたしっと。おめでとうございます」

「……お前、おちょくってんだろ」


いつかと同じ、社内の自動販売機前。けれど今回は、時間帯が夕方で、先にいたのは田辺の方。岡嶋は、田辺の姿を見て回れ右をしたのだが、あえなく捕まってしまった。
そしてもちろん最初に田辺の口から飛び出した話題は、田辺曰く“年下の彼女”こと島田とのことで、上手くその話題から逃げきれなかった岡嶋は、事の顛末を説明させられて今に至る。


「これは俺からのささやかなご祝儀です」


そう言って田辺から渡されたのは、ブラックの缶コーヒー。


「……本当にささやかだな。つうか、まだ結婚してない!」

「なるほど、“まだ”ですか。つまりご予定はおありと」


田辺の意味深な言い方に、しまった……島田の時と同じミスを犯してしまったと悔やんだところで後の祭り。
これ以上田辺におちょくるネタを与えてしまう前に立ち去りたいのだが、がっしり掴んだ腕を田辺が離す気配はない。