いやでも考えようによっては、大人になって変えた呼び方をまた戻すというのは、逆に始めて呼ぶよりハードルが高いのでは?なんて心の声が聞こえたりもして、岡嶋は頭を抱えるはめになった。


「雅功くんは考え過ぎ。そんなことなら、今からスパッと“美沙”って呼んだらいいのに」

「……考え込むのは性格なんだよ。しょうがないだろ」


ため息と共にそう返せば、「難儀だねー」と島田。


「まあでもこれからは、あたしにもちゃんと相談してよね。特に二人の将来のことは、雅功くんが一人で考え込んでいいことじゃないんだから」


そんな島田の言葉に、岡嶋はほんの少し間を空けてから「なあ……」と口を開く。


「その……将来のこととか、そういうことじゃないが、気になってたことが」


カップを口元に当てた状態で、島田が先を促すように首を傾げる。それを受けて岡嶋はぼそぼそと言いにくそうに続けた。


「まあその、なんていうか……大したことではないんだけど、あの、あれだ……」


一口カフェオレを飲んでから、「どれよ」と島田。


「……今日、一緒にいた男って、その…………友達、か?」


そっぽを向いて、心なしか恥ずかしそうに赤くなりながらの問いかけに、数秒程ぽかーんとしたところで、島田は笑った。


「安心していいよ。雅功くんが思っている以上に、あたしは雅功くん一筋なんだから」