「雅功くん、アニメみたいな飛び跳ね方だったね」


ふふっと可笑しそうに笑った島田は、心臓がバクバクし過ぎて動けない岡嶋の代わりに、カップを二つ取り出して飲み物の用意をする。
岡嶋にはコーヒーを、自分用には牛乳とお砂糖をたっぷり入れたカフェオレを。


「はい、どうぞ」


立ち尽くす岡嶋の前にカップを置けば、そこでようやく岡嶋が我に返る。ハッとしたようなその顔にまた、島田はふふっと笑みを零した。


「あのさ、雅功くん」


名前を呼ばれただけで、岡嶋の心臓がびくっと跳ねる。ついでに肩も跳ねる。


「なんだ、今度は……」


頼むからもうやめてくれこれ以上は恥ずか死ぬと内心怯えていると、島田は一度大きく息を吸ってから吐き、その後岡嶋を真っすぐに見つめて口を開いた。


「あの日の夜ね、雅功くんが心配してたようなことはまだしてないよ」


島田の顔をしばし見つめて、岡嶋は固まる。


「……“まだ”って言わなかったか?その“まだ”ってなんだ」

「未遂ってこと」


違う、そうじゃない。そういう意味なのはわかっている、聞きたいのはそれではない。