「雅功くんはそうやってずっと、あたしに対する気持ちを家族に向けるようなものだって思い込んでいたみたいだけど、そうじゃないからね。例えそれで周りと自分は騙せても、あたしのことは騙せないから」

「いや、あの……うん、わかった。わかったからそれ以上は……」

「雅功くんの好きは、ちゃんと女性に対する好きであって、英語で言うならloveなのであって、家族に向けるlike的な好きとは意味合いが――」

「わかった!もう充分わかったから島田!」

「いや、まだ雅功くんは全然わかってない。だからね、つまり雅功くんにとってあたしは――」


あっと、そろそろお湯が!とわざとらしく大きな声を出して、岡嶋は逃げるようにその場を離れる。
ここに来た時は不機嫌さ全開だったのに、なんだあの変わりようはと思うと同時に、込み上げる恥ずかしさでどんどん心拍数が上がっていく。
これはいかん、一旦気持ちを落ち着けたいとキッチンに逃げ込んで距離を置いたのも束の間、ふと横を見ると笑顔の島田が立っていて、岡嶋はあまりの驚きに思わず飛び上がる。