「あのな、いつも言ってるだろ。来る時は連絡しろって。それに、こんな時間に一人で……何かあったらどうするんだ」


責めるような口調になってしまった岡嶋に、島田は不機嫌そうな視線を向ける。


「連絡したら迎えにでも来てくれたの?違うよね。連絡したら、真っすぐ家に帰れって言うんでしょ。そんなのわかってて誰が連絡するの」


それは――と言いかけて、岡嶋はハッとする。
廊下は意外と声が響く。他の住人は寝静まっているであろう時間帯に、ここで言い合いをするのはよろしくない。


「島田、とりあえず中入るぞ」


促しながら追い越した岡嶋が、玄関の鍵を開けて振り返ると、膨れっ面のままではあるが、素直について来ていた島田が後ろに立っているのが見えた。
ほれ、と玄関のドアを開けてやると、島田が黙って中に入っていく。それを追いかけるようにして、岡嶋も中に入った。

先に部屋に入った島田は、まるで自分の家かと思うような自然な動きで、部屋の暖房と電気を点ける。
それを横目に岡嶋はまずキッチンに入ると、電気ポットのスイッチを入れた。
恐らく体が芯まで冷え切っているであろう島田には、温かい物で内側からも体を温めた方がいい。