「これだけ片付けたら帰ります」


最後に岡嶋が使ったグラスと、おつまみが乗っていた皿が数枚。これだけなら、大して片付けにも時間はかからない。


「そう?じゃあ、お願いしようかなー。あっ、せっかくだしなんか食べていく?ナポリタンでも作ろうかー……と思ったらスパゲティを切らしてた。……そうだパンがあった!パンでもいい?」

「何でもいいですよ」


苦笑気味に頷く真帆の前で、マスターが冷蔵庫から取り出した材料を調理台の上に並べていく。
カロリーの高そうな物は控えた方がよさそうな時間帯ではあるが、たまには背徳感を味わってみるのもいい。
マスターが鼻歌交じりに調理する横で、真帆は食器を洗っていく。


「そういえばさ、さっきのお客さんって、知り合いだったのー?」


ああ、いえ、知り合いでは――と答えながら横を向いた真帆は、皿に乗せられたやたらと分厚い食パンに、一瞬言葉が止まる。
しかしすぐに我に返って、「共通の知り合いがいたみたいで」と答えて、手元に視線を戻した。