「島田は?なんでここに……」


問いかける岡嶋の視線は、置き去りにされて手持ち無沙汰に立ち尽くしている人物へと向かう。


「ああ、ちょっと用事があって出かけたついでに夕飯をね。それで帰ろうとしたら、“岡嶋さん”って声が聞こえて」


島田の視線が、真帆へと突き刺さる。
別に睨まれているわけでもないのに、“突き刺さる”と表現するのが体感としてはぴったりだった。


「珍しくべろべろじゃん。どれだけ飲んだの?」

「……べろべろって程じゃないだろ」

「でも耳まで真っ赤。もう帰るんだよね?あたしもだから送っていくよ」

「いや、いい。もうすぐタクシーくるから。島田は……」


岡嶋の視線を追いかけるように島田も同じ方を向いて、手持ち無沙汰に立ち尽くす人物に目を留める。


「あんまり待たせても悪いから、早く戻れ。帰り、気をつけろよ」


半ば無理矢理押しやるようにして島田から離れた岡嶋は、真帆を振り返り「タクシー、あと五分くらいですかね」と問いかける。


「え……あ、はい。えっと……そう、ですね。中で待ちますか?」


初めは戸惑っていた真帆も、岡嶋の視線による訴えをどうにか感じ取ってそう答える。
それに岡嶋はほっとしたように「じゃあ、そうさせてもらおうかな」と答えた。