「もしあいつのそんな一面を見つけたら、是非俺にも教えてください」


もちろんです!と答えた真帆に、「また来ます」と返して岡嶋は背を向ける。しかし岡嶋は歩き出すこともなく、そこに黙って立ち尽くした。


「岡嶋さん……?どうされたんですか。あっ、やっぱり具合が――」

「雅功くん」


聞こえた声に、真帆は驚いて顔を上げる。
声のした方には、二人の人物が立っていた。一人は女性で、もう一人はおそらく男性。声を発したのは女性の方で、その視線は真っすぐに岡嶋へと注がれていた。
かと思ったら、女性は隣に立つ人物を置き去りに、ずんずんとこちらへ歩いて来る。


「お知り合いですか?」


真帆が訊きたかったことを、近付いてきた女性が真帆へと尋ねる。


「え?あ、えっと、お知り合いというか、その……」


予期せぬ問いに真帆がまごまごしていると


「そこの、お店の人。送って来てくれたんだ。それでちょっと話を」


岡嶋が助け舟を出してくれる。
そうなんです、という意味を込めて真帆が力強く頷くと、女性は「そうですか」とすぐさま真帆から岡嶋へと視線を戻した。