「だからモヤモヤするし、すっきりしなくてイライラもする。でも、嫌いだったらそもそも悩まないですよね」


そう、嫌いならば“嫌い”の一言で片付く。それ以上何を考える必要もないし、この嫌いはどういう嫌い?なんて悩むこともない。


「まあ、偉そうに言いましたけど、人にはそれぞれ事情もあるでしょうから一概には言えませんよね」


そう言って恥ずかしそうに頭をかいて、それから岡嶋は改めて真帆に向き直る。


「でも、あいつがマイペースで自由で、それでいて腹の立つ奴なのは、自分が懐いている人の前でだけですよ。昔のあいつがどんなんだったかは知りませんが、少なくとも今のあいつはそうです」


岡嶋の言葉に、真帆が小さく苦笑する。


「私も、昔の田辺くんのことはよく知りません。今の田辺くんのことも、そんなに知りませんけど」


その言葉に、岡嶋は首を傾げる。田辺と真帆は、高校のクラスメイトだと聞いていたと思ったのだが。思い違いだっただろうか。