「まあそういうわけだからお客さんも、年齢なんて気にしなくていいんですよー。そういうのは一旦忘れてみたら、案外すっきりするのかもしれませんよ。悩んでモヤモヤしていたものの、答えが見つかるとかねー」

「……答え、ですか」


口で言うのは簡単だが、実際にやろうとすると案外難しい。
特に岡嶋は、これまで長いこと年齢を気にし過ぎている。おかげで、島田や田辺にそれを指摘されることも少なくない。
その度に、まだ若いお前らにはわからんだろと心の中で毒づいている。時に田辺には声に出して毒づくこともあるが。


「まあ、そんなに簡単に答えが見つかるなら、誰も苦労はしないんですけどねー」


ついさっきの自分の発言を、早速打ち消しにかかるマスター。田辺も中々に掴みどころがなくてわかりづらい男だと思っていたが、このマスターはその更に上を行くかもしれない。
二人の違いを上げるとするならば、田辺には確信犯的な掴みどころのなさがあるが、このマスターから感じられるのは、天然的な掴みどころのなさといったところだろうか。