「いやあ、青春だねー」

「……青春、ですか?俺はもうそんな年では……」


恥ずかしそうにグラスを傾ける岡嶋に、マスターはニコニコと笑みを浮かべながら


「幾つになっても、青春は青春ですよー。これは青春だって思えば青春なんです。年齢なんて関係ないですよ」


確かに、年齢は関係ないなんて言葉をよく聞きはするが、それにしたって“青春”という言葉を使われるのは、むず痒いような気恥ずかしさがある。


「年齢を気にしてちゃ、やりたいこともやれませんからねー。だから僕は、気にすることをやめましたよー。おかげで自分の年齢も時々忘れます」

「そう、なんですか……」


そんなことあるだろうか。いやでもこの年齢不詳さは、だからこそ出せるものなのかもしれない。年齢を気にし過ぎないあまり、自分の年齢を忘れてしまっているから。
だがこれで、せっかくのタイミングなので尋ねてみようと思っていたマスターの年齢を、尋ねることが出来なくなってしまった。
尋ねたところで、「あれ……僕って今幾つだろう」と首を傾げる姿が容易に想像出来る。