「美味しいですね、これ」


感激して思わず声が大きくなってしまった岡嶋に


「そうでしょう!」


マスターがより大きな声で返す。


「彼女の作るものは美味しいんですよー。いやあー味のわかるお客さんで嬉しいなー。お客さんに出会えて、今日はとてもいい日です」


いい日記念にナッツのサービスでーす。とマスターが小皿に盛ったナッツを岡嶋の前に置く。
苦笑しながらも、せっかくなのでそれをありがたくいただいていると


「ところでお客さん、何に悩んでおられるんですかー?よければお話聞きますよ。ここ、一応バーなんで」


バーであることは何か関係があるのだろうかと思ったが、視界の端に映る女性も首を傾げているので、どうやら今の発言に疑問を感じているのは岡嶋だけではないらしい。


「まあ、その……大したことではないっていうか、悩み……と呼べるほどのものでもないので」

「なるほど。まあ無理には聞きませんけどねー。ここ、バーなんで」


だからそのバーであることは何の関係があるんだと思ったが、女性も突っ込みたそうにしながら我慢しているのが視界の端に見えたので、岡嶋も我慢することにした。