ちょこちょこと会話に挟まりつつも、女性はくるくるとよく動く。
マスターの動きがわりとのんびりしているので、とても対照的な二人だ。
よく見ていると、お互いにお互いの仕事を邪魔しないように動いているのがわかるので、感心してしまう。


「この店は、始められてから長いんですか?」


夫婦なのだろうかなどと邪推しながら、岡嶋は問いかける。マスターはしばし考え込むような仕草をした後で


「僕のお祖父ちゃんが始めた店だから……何十年になるんだっけかな。まあその間に何度か閉めたりもしてるから、ずっと続けてたってわけではないんですけどねー」

「マスター、この店を継ぐ前はホストやってたらしいですよ」

「ホスト!?」

「この辺りでじゃないですけどねー」


言われてみれば、見た目は確かに整っている。ホストクラブにいてもおかしくはなさそうだ。
ただ、この間延びした話し方とのんびりした動きが、ホストっぽくない。
まあ、岡嶋は本物のホストを見たことがないので、ただの印象に過ぎないのだけれど。