「あ、この生ハムはうちのマスターからのサービスなので、気にせず召し上がってください」

「せっかくうちの店を選んで来てくれたんですから、サービスしますよー。はいじゃあカンパーイ」

「え、あ、どうも……乾杯」


選んだというか、声をかけられたのでついて来ただけなのだが、その辺の正確さは今求められていない気がしたので言わずにおいて、岡嶋はマスターのグラスに控えめに自分のグラスを当てた。


「お客さん、白と赤だったらどっち派なんですー?」

「そもそも俺、あんまりワイン飲まないんですよね。飲めないわけじゃないんですけど、居酒屋行くとほとんどビールだし、こういうオシャレな店って来たことないし」

「聞いた?オシャレだってこの店ー。いやあー嬉しいねー」

「そうですね。あっ、ビールもありますから、遠慮せず飲みたいものを注文してくださいね。緩くて適当そうな感じに見えますけど、うちのマスター腕はいいので、カクテルも美味しいですよ」