「あっ、そのチーズ、すっごい美味しいですよー。試食した時あまりの美味しさにびっくりしちゃって、お店用と自分用にも買っちゃったんですよねー」

「……マスター、ちゃんと手元見て開けてください。そんなことしてると、またコルク吹っ飛ばしますよ」

「ああ、あれはねー、驚きだったよねー。しかもあのコルク、まだ見つかってないんだよ?更に驚きじゃない?掃除しても出てこないなんて、どこ行っちゃたんだろうねー」


そんなことを言いながらも、今回は何事もなく開封したマスターが、用意されたグラスにワインを注ぐ。
何のワインなのか一切の説明を聞かずに注文してしまったが、グラスに注がれた色を見て白ワインであることを知った。


「あ、そうだそうだ、生ハムもあったよね。あれも出しちゃってよ。お客さんと、あと僕にもー」

「……なんでマスターにも?」

「僕もワインをいただく、いや味見するからー」

「味見におつまみが必要ですか?」

「つまみとの相性も確かめないと。ね、そうですよねー?」

「え、俺?」

「お客さんを巻き込まないでください」


小さくため息をついてから、女性は小皿を二つ取り出して生ハムを盛り付け、一つは岡嶋に、もう一つはマスターの前に置く。