「貶してはいないから大丈夫」

「なんか引っかかる言い方だな」


普通に、“美味しいから大丈夫”と言った方がよかったかもしれない。いや、“大丈夫”とつけてしまう時点で、もう田辺としては不満なのだろうか。
その不満げな表情のままにうどんを啜る田辺を横目に、日本語って難しいな……なんて思いながら真帆もうどんを啜ろうとして、失敗してむせた。


「田中さんのためにうどんを作った優しい俺をバカにするからだよ」

「バカにはしてないってば」


げほごほむせる真帆に、初めは田辺もそれ見たことかと得意げな顔をしていたけれど、やがて見かねたようにティッシュを箱ごと差し出した。
そして席を立ってキッチンに向かったかと思ったら、水の入ったコップを持って戻ってくる。
一つは自分の分、そしてもう一つは真帆の前に。


「そういえばさ、田中さんって高校卒業してから何してたの?」

「……なに、急に。ていうか、タイミングおかしくない?」


田辺が持ってきてくれた水をありがたく頂戴してどうにか咳は収まったが、ついさっきまでむせていた相手に振る話題がそれなのか。