質問する相手を完全に間違えたと思ったが、後の祭りだ。
そして楽しそうにそんなことを宣言する田辺を見て、とんでもない奴に目を付けられたなと、岡嶋は真帆に同情した。


「あれ、岡嶋さんもう行くんですか?昼休みまだありますよ」

「戻って少し寝る」


お茶を飲み干して立ち上がった岡嶋は、テーブルの端に置かれた伝票を手にレジへと向かう。二人分の会計を済ませて外に出ると、田辺が慌てたように追いかけてきた。


「ちょっと、いくらなんでも置いていくのはあんまりでは!?」

「お前がちんたらしてるからだろ」

「とりあえず、ご馳走様です。あっ、それとも返せって言います?」

「言われたくなかったら、このあとの俺の昼寝を邪魔するなよ」


ええー俺はもっとお喋りしたいのにー、なんて不満げな声を上げる田辺だけれど、岡嶋が本気で休みたいと思っている時には邪魔をしない程度の空気は読める。


「そうだ、岡嶋さん。さっきの幼馴染み彼女さんの話の続きですけど」

「もうその話は終わった。続きなんてない」


歩調を速める岡嶋に、負けじと田辺もついてくる。


「いやいや終わってないですって。で、その話ですけど、岡嶋さんって案外乙女だったんですね」


ぴたりと、岡嶋が足を止める。おかげで田辺が追突しそうになった。