「それで結局、岡嶋さんは何をそんなに悩んでるんですか?」


田辺の問いに、岡嶋は機械へと向けていた視線を戻す。


「なにって……」


話せというからとりあえず、近頃の考え事の原因を話してはみたものの、つまり何に悩んでいるのか?と訊かれると、答えに詰まる。


「まあ、その……待たせているのが友達なんだったら、俺に伝える時に濁す必要はないわけだから、そこで濁したってことはつまり待たせている相手は友達ではなかったってことで、じゃあ誰なんだってちょっと疑問に思っただけで、別に悩んでいるとかそれほどのことでは……」

「悩んでないのに、夜も眠れないんですか?」

「……ちょっと寝つきが悪いだけで、眠れないなんてそんな大げさなものでは」

「岡嶋さんがどう言い訳しようとも、そのクマが全てを物語ってますけどね」


そう言って自分の分のお茶を飲んだ田辺は、「あちっ」と顔をしかめる。


「要するに岡嶋さんは、結婚を約束したはずの幼馴染みが、別の男と親密な関係になっているかもしれないと思い悩んでいるわけでしょ。それで夜も眠れないと」


結婚の約束をした覚えは――と言いかけて、いやそういえば島田はずっと結婚の話をしていたというか、責任取ってと迫られていたことを思い出し、岡嶋は開きかけた口を閉じた。