勘が働いたのだろうか。岡嶋が気になって目で追いかけたその人物は、駐車場を突っ切るようにして真っすぐにカフェの方へと走って行った。
そして岡嶋の予想通り、その人物の姿を見付けた途端、島田の顔に笑顔が浮かぶ。

何を話しているのかまでは聞こえないが、なにやら慌てて駆け付けた方がしきりに頭を下げていて、島田がそれに苦笑している。
島田の待ち合わせ相手であるらしいその人物は、岡嶋の知らない男だった。

パッと見た感じ、年は島田と同じくらいに見えるから、大学の同級生だろうか。店の前で一通りの会話と謝罪が終わると、二人は一緒にカフェへと入っていく。
店内に消える直前にちらりと見えた島田の横顔は、とても楽しそうだった。

二人が見えなくなってからも、岡嶋はしばらくその場から動けなかった。
しばし呆然と誰もいないカフェの前を眺めていると、先ほど空いた隣のスペースに車がバックしてくる音が聞こえて、我に返る。

にわかに混みあってきた駐車場に、こうしてもいられないと、岡嶋はようやくエンジンをかける。
最後にもう一度ちらりとカフェの方を見てから、岡嶋はゆっくりと車を発進させた。