「でも言いたいことはわかるよ。一部屋を二つに分けられるのはいいんだけど、分けた途端に圧迫感が凄いんだよね。だから、急な来客時の目隠しくらいにしか使わない」

「……私、何も言ってないはずなんだけど」

「顔に書いてあった。早くしないとのびるよ」


確かに田辺が言った通りに、圧迫感があるんだよな……とは思っていたけれど、そんなにわかりやすく顔に出ていただろうか。


「ネギ焼いてるうちにうどんをちょっと茹で過ぎちゃったんだけど、そこは大目に見てね」


促されるまま、真帆は田辺の向かい側に座る。
本当はあまり食欲がないのだけれど、こうやって出されてしまうと拒否するのも気が引ける。

いただきます……と箸を取り、うどんを掴む。確かに茹で過ぎのようだが、今日のように弱った胃には、むしろその柔らかさが丁度いい。
生姜もネギも温かいお出汁も、全てが弱った胃に染み渡る。


「これはあれだ、今日みたいに飲み過ぎたあととか、それから風邪を引いた時とか、内臓が弱っている時に食べたくなる味だ」

「……それってさ、褒めてるの?」


心の中で呟いたつもりだったのだが、どうやら声に出ていたらしい。田辺が微妙な表情をしている。