「ねえ岡嶋さん、そのクマどうしたんですか?もうお昼ですよ。お昼になったら教えてくれるって言ってたじゃないですか」

「言ってないだろそんなこと!だからついてくるな」

「ゆっくりお喋りするのにぴったりなお店ありますよ。男二人でも気兼ねなく入れる感じの定食屋です。その信号渡ったら右に曲がってください」


すかさず左に曲がろうとした岡嶋の腕を、田辺ががっしり掴んで右へと引っ張る。


「おいこら!」

「岡嶋さんってば方向音痴なんだからー」


そのままぐいぐい引っ張られ、気付けば岡嶋は定食屋の暖簾をくぐっていた。


「おっ、昼時の割に空いてる。ラッキーですね岡嶋さん」

「いい加減に離せ!」

「奥の席にしましょうか」

「聞けこら!」


店の一番奥の四人掛けテーブルまで岡嶋を引っ張ってきた田辺は、奥の席に岡嶋を座らせ、自分はその向かい側に腰を下ろす。


「さて、先に頼みますか。メニューどうぞ、岡嶋さん。ちなみに俺のお勧めは、カツ丼です。お蕎麦とのセットも美味しいですよ」