「こっちが田中さんの分ね。あっ、パセリいる?」

「いらない。ていうか、私のにもついてるし」


そっか、じゃあいただきまーす!と田辺が言うのに合わせて、真帆もぼそっと「いただきます」と零す。
そっとスプーンを差し込んで、玉子とご飯にソースも乗せると、湯気の立つそこに息を吹きかけてから口へと運んだ。

ふわとろの玉子と、トマトソースでさっぱりと仕上がったご飯、それらを包み込む濃厚なデミグラスソースの相性は抜群で、思わず顔が綻ぶ。
そんな満足そうな真帆の様子に、田辺もまた満足げだった。


「うんうん、バターライスとクリームソースで重たくなりそうなところに、明太子がピリッと効いて来て凄く良い感じ」

「ふーん」

「田中さんもほら、食べてみなよ」


皿をぐいっと押し出されたので、真帆は田辺が抉った方ではない方にスプーンを差し込む。
確かに田辺の言う通り、バターとクリームの濃厚コンビを、明太子がピリッと引き締めてくれていて、こちらもとても美味しい。
田辺も真帆が半分に割ったオムライスを食べながら、笑顔で何度も頷いていた。