結局ランチが届くまでぶーぶー言いながら田辺とジェンガをしていた真帆だが、届いた料理が目の前に並ぶと、途端に不満げな顔が明るく輝いた。


「え、実物がとんでもない。とんでもなく可愛い!うわぁー玉子ふるふる。え、どうしよう。ちょっと待って、あっ!とりあえず写真」


まずは落ち着いた方がいいと思うけど、なんて苦笑する田辺に構わずに、真帆はカバンから取り出したスマートフォンで、上から横から斜めからと、アングルを変えて写真を撮りまくる。


「……そんなに写真いる?」


今度は、若干引いている様子の田辺にナイフを持たせると、カメラを動画に切り替えて構える。


「綺麗に割ってね。美味しそうな感じで、とろっと玉子がご飯を覆うように」

「むしろ俺が撮るから、自分で割りなよ」


ほら、とナイフを渡されるが、「いいから早く」と真帆は急かしながら拒否する。すると諦めたように息を吐いてから、田辺はそっとオムレツにナイフを入れた。
まずは中心に一本切込みを入れ、そこから左右にオムレツを開いていく。可愛らしいくまの焼き印にナイフが入る瞬間はやや心が痛んだが、田辺はまるでお構いなし。

けれど真帆も、ふわとろの玉子でケチャップライスが覆われる瞬間には、思わず「おおー……」と歓声を上げてしまい、くまのことなど頭からすっ飛んでいた。
しかもその声は、ばっちり動画に入ってしまう。