「田中さんさ、前にトランプやった時も全然勝ててなかったけど、もしかしてこっち系のセンスをお持ちでない?」

「と、トランプは、運の部分だってあるでしょ。あの時はたまたま運が向いてなかっただけ!ジェンガは田辺くんがうるさかっただけ!」

「まあ、そういうことにしておいてあげてもいいけど」


テーブルの端に見え隠れする小癪な田辺の頭を睨み付け、真帆はテーブルの上に散らばったジェンガをかき集める。


「ていうかさ、そろそろお腹空かない?そういえば俺、昼飯食べに行こうとしてたのに、昼飯じゃなくて田中さんをお持ち帰りしてしまったことに今気が付いた」

「……なにそれ、上手いこと言ったつもり?あれは最早誘拐だからね」

「大げさな。なんやかんや言いながら、自分の足で歩いて来たのは田中さんだよ?」

「田辺くんが引っ張るからでしょ!あと、“持ってあげるね”なんて人の良さそうな顔して、私の卵を人質に取って」

「卵は人ではないけどね」


あはは、なんて笑う田辺の頭上に、テーブルの上のジェンガを降り注がせたい気持ちをぐっと堪える真帆。


「まあそんなわけでさ、田中さんもお腹空いたよね?何食べたい?デリバリーでも頼む?」


テーブルの端からひょこっと顔を覗かせる田辺に、真帆は一言。


「いやいい、帰る」


そしてカバンと上着を手にしたところでハッとする。