「なんだかんだ言って、岡嶋さんだってしっかりその気なんじゃないですか」

「いや、違う!あれはただ――」

「というかこれ、何ラーメンなんですか?なんかめっちゃ白いですけど」

「クリーミー塩ラーメンだそうだ。塩ベースのスープに、牛乳とか生クリームでクリーミーさを加えているらしい。味玉の代わりに温玉が乗っているから、それを崩して食べるのがまた美味いと聞いた。ちょっと洋風な味だから、かけるなら普通の塩コショウじゃなく、ブラックペッパーがお勧めだそうだ」

「……誰情報なんですか、それ」

「課長」


ああ……と田辺が納得の声を漏らす。課長は社内のみならず取引先でも、無類のラーメン好きで有名だ。ついでに会社と家の近くのラーメン屋は通い過ぎて、店員に顔を覚えられていると聞く。


「それでこのミルがついて来たんですね。なんでラーメン屋で?って思いましたよ。間違えて置いていったのかと」


不思議そうにミルを眺める田辺は放って、岡嶋は箸を手に取る。早速一口食べようとしたタイミングで、ハッと思い出した。


「そういえば田辺お前、さっきとんでもないこと言って――」

「あ、やべ、玉子が早速割れた。しょうがない、とりあえずこの辺の玉子がついてないところをまずは」

「食ってる場合か!」


誰かさんのせいで、こちらは食べるのも後回しにしているというのに。