「ていうかそもそも、家に来てもらうところから大変だったんですよ!何言っても“絶対嫌だ”の一点張りで。田中さんがあんなに頑固な人だとは知らなかったです」

「その割に楽しそうな顔してるのはなんなんだ?気持ち悪いぞ」


苦労話を聞かされていると思っていたのだが、田辺の表情はむしろ、楽しかった休日の予定を語っているそれだ。


「また一つ、田中さんのことを知れましたからね。お礼に俺のことも田中さんに教えたんですけど、“いらない、興味ない”って言われました。あと岡嶋さん、“気持ち悪い”はさすがに酷いです」


なるほど、苦労したのは事実だけれど、それすらも楽しい休日の一幕だったというわけか。


「それと、さらっと話題を変えましたよね。やっぱり人には言えないようなこと、したんで――ぶっ!!?」

「ほら、メニューだ。よく見ておけよ」


待っている人向けに用意されたメニュー表を手に取ると、岡嶋は田辺の顔面に押し付けるようにして渡す。
痛いです岡嶋さん……と田辺から非難がましい視線を向けられるが、もちろん無視した。


「岡嶋さんって、俺にだけあたりキツイですよね」

「自覚があるなら態度を改めてみたらどうだ?」

「これくらいフランクな部下が一人くらいいた方が、岡嶋さんも楽しいでしょ?」


自覚はあっても改める気はないらしい。