――雅功くんさ、もしかしてちょっぴり意識してる?
どちらの店に行くことになろうとも、道中二人きりなのは変わらないので、その間に島田は、先ほど言いかけて遮られた言葉を、今度こそ最後まで言ってやろうと決めていた。

その時岡嶋は、どんな反応をするだろうか。
先ほどの感じを見る限り、島田にとっては悪くない反応が返ってくると予想する。

だから、とても楽しみだ。
パーに開いた手の平を見つめ、「なるほど、そうか……」と呟く岡嶋に、島田は笑顔でピースの形を見せつける。


「あとでもう一回チラシ見せてくれ」

「はーい」

「それと島田、早く支度しろ」

「そうだね、せっかくのデートなんだからオシャレしないと」

「っ!そういう意味じゃないぞ!」


慌てたような岡嶋の声を聞き流しながら、島田は立ち上がって寝室へ服を取りに行く。
昨日は確かクローゼットの近くに脱ぎ散らかしたはずの服が、綺麗にたたんで置いてある。

心なしか昨日の飲み会で染み付いた匂いが薄れているような気がするのは、消臭スプレーでもしておいてくれたのだろうか。
のそのそと着替えをしていると、部屋の前を通りかかった岡嶋が、のあっ!?とおかしな声を上げた。