「そこで、なんでかって訊くところが雅功くんだよね。まあ、わかってるけど」

「……今日はやけに含みのある言い方するな」

「なんでだと思う?ヒントは、いい加減気づいて欲しいから」

「……髪切ったのか?」


ダメだこれは。


「切ってないから。気付いて欲しいっていうのはそういうことじゃないし」


首を傾げる岡嶋の頭の上には、大量のクエスチョンマークが浮かんでいるのが見えるようだ。全く、困った人である。


「まあ別にいいけどね、気付いてもらえるとは思ってないし。それより雅功くん、あたし安くていいから指輪が欲しい。婚約済みですって証に、ここにはめておくやつ」


島田は、“ここ”と左手の薬指を指差して見せる。
それを見て流れに乗るように「ああ、指輪……」と呟いた岡嶋は、そこでハッと我に返ったようだった。


「指輪!?ちょっと待て、その話はまだ決着がついてなかったはずだろ」

「どうせ最後にはそうなるんだから、いいじゃん。それとも雅功くんは、昨日の夜は何もなかったと言い張って、そのままうやむやにする気?」

「……いや、言い張るとか、そういうことじゃなくてだな……もう少しこう、慎重な話し合いが必要な案件というか……」

「だからさっきから、説明するって言ってるじゃん。聞きたくないって拒否してるのは雅功くんなんですけど」


岡嶋が、うぐ……と言葉に詰まる。