「……雅功くんさ、先週の土曜日に一緒にいた人って、誰」


ん?と声が返ってきたから聞こえていないのかと思ったら、「先週……?」と続いたので、どうやらちゃんと聞こえていたらしい。
それから、「先週の土曜、先週の土曜……」とぶつぶつ呟き、記憶を辿るように上を向いたり、テレビ画面を睨み付けたりした挙句、最終的にスマートフォンのカレンダーを眺めてようやく思い出したようで、「ああ!」と声を上げる。


「なんだ、島田も駅前にいたのか?あれだろ、午後六時頃の話だろ」

「六時半頃ね。友達と遊んでて、ちょっと早いけど晩ご飯食べに行こうかって話になって駅の方行ったの」


その時に、同じく駅前にいた岡嶋を見つけたのだ。それも、女性と一緒にいる岡嶋を。
彼女でないのはわかっていた。岡嶋にそういう相手がいないことは、本人から聞いて知っていたから。

それに、並んで立つ二人は、横に並んでこそいるけれど、恋人同士の距離感ではなかったし。
けれどそれを見た時、岡嶋の隣に自分以外の女性が立っているのを見てしまった時、島田はどうしようもなく不安になったのだ。
そして気が付いてしまった、そういう未来もあり得るのだと。岡嶋の隣は、自分だけの場所ではないのだと。