「雅功くんは、どう見ても適当に入れてるのに毎回美味しいんだよね」


ぶつぶつ零しながら二つのカップに粉を入れると、そこにお湯を注いでいく。
途端にココアの甘い香りが立ち上って、香りは百点だなと独り言ちる。

スプーンを使ってよくかき混ぜたら、最後にそこにとっておきをそっと浮かべる。
岡嶋のは少なめに、自分の分はたっぷりと。生クリームの代わりに、マシュマロでココアの表面を覆う。


「よし、完成。さてと、今回の出来栄えはどんなかな」


カップを手に振り返ると、岡嶋はまだソファーの上。踏み出そうとした足をぴたりと止めて、島田はしばしその姿を眺める。
幼い頃にみた夢は、今も変わらず島田の中にある。それを叶えるために色々と手を尽くしているつもりなのだが、一向に成果は見られない。

手の尽くし方がよくないのか、はたまた相手が鈍感過ぎるのがよくないのか。
考える姿を眺めながらしばし考えていると、不意に岡嶋が顔を上げてキッチンの方を向いた。
目が合うと、それだけで胸がドキッとする。